映画「REALVOICE(リアルボイス)」を見て―虐待に耳を傾け眼差しを向けること


虐待を経験した若者たちがそれぞれの思いを語るドキュメンタリー映画。

 

多くの人に虐待の現状を知ってもらいたいという監督および制作関係者たちの想いが込められた貴重な映像作品。

 

この映画の衝撃を受け止めることから始めよう。

 

当事者たちの生の語りからは、痛みと苦しみを抱えながらも必死に生きるために自分で自分の身を守るしかなかった当時子どもであった当事者たちの姿が生々しく浮かび上がってくる。そんな子どもの姿が大人になった今なおその経験と苦闘している姿と重なる。

虐待経験と向き合いながら自分を生きているということがずっしりとした重みとともに伝わってくる。

 

虐待を受けたという経験が自分の身体にも心にも、自分が関わる人との関係性にも深く刻まれ、その後の人生にも大きな影響を及ぼすということがこれでもかという程に思い知らされる。

 

子どもを虐待する親、虐待されているというSOSを無視する周囲の大人、また弱みに付け込み搾取する大人、その経験を持っていることに偏見をいただく社会。

 

助けてほしいという声や声にならない想いを無視せずに聞いてくれる耳、目を背けずに気づいてくれる眼差し、助けるために差し伸べてくれる手を求めていた傷ついた子どもたち。また、虐待する親たちもその昔は傷ついた子どもたちだったのかもしれない。助けを求めていたのかもしれない。

 

自分の経験してきたことを背負いながら生きることの苦しさ。

苦しくても生きていく。

 

「かわいそうって、何も知らないのに決めつけないで。家族のかたちは人それぞれ」

「虐待をしたくてしてたわけじゃない」

「誰かに気づいてほしかった」

「助けてほしかった」

 

当事者たちの声に耳を傾け、その姿に眼差しを向けよう。

 

この作品には虐待の衝撃だけでなく、その苦しみと向き合い、前を向いて生きることを支えていくための優しさと温かさがたくさん詰まっている。

 

当事者たちのリアルな声が多くの人に届いてほしい。

 

そして、届いた人ひとりひとりがそれぞれに、この作品を感じ、考え、向き合っていくことが虐待の深刻さを社会全体で認識していくことにつながることに期待したい。


子どもが傷つけられることなく大切に守られる社会になってほしいと切に願う。

 

 

監督の山本昌子さん、制作関係者の皆さん、生の声を語ってくれた当事者の皆さんの想いをしっかりと受け止めたい。

 

 

「REALVOICE」

https://real-voice.studio.site/