「子どもの生きた心へのまなざしを」
これこそが私たちが最も大切にしたいと思っていることなのですが、そんなの当たり前だと思われる方も多いかもしれません。
しかし、その当たり前が難しいのです。
少し自分語りを交えながら、この当たり前のことがいかに私たちにとって大切なことなのかを説明したいと思います。
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自分自身の心というものは他者との出会いと交流から生まれ育まれるものです。
誰かに自分の心を見てもらい、聞いてもらい、関わってもらうことの安心感は、当然、恐怖や不安も伴いますが、「自分の心が生きている」と感じられる経験につながっていきます。
誰にも見てもらえず見つけてもらえない心は次第にしぼんで自分自身でも見つけられないところに隠れてしまいます。心が迷子になり、心が生命感を失います。
自分の心を誰かに見つけてもらうことで、心のなかにある生き生きとしたものは再び生命感を取り戻していきます。
私は精神分析的心理療法という方法を学んできました。
特に、子どもの心にいかに向き合い、子どもの心にいかに生命感を取り戻し育んでいくことができるのかということを探求してきました。
その過程で、私自身がその方法を実際に受けてみるという経験をしました。数年間にわたり、自分の心を他者との間で見つめ直し、つむいでいく体験です。
私の子ども時代は引っ込み思案で自己主張が苦手なナイーブな存在でした。そんな子どもの自分が今なお自分の心のなかで怯えていることを発見しました。
その臆病な子どもは実は好奇心旺盛に自分の関心に向かって進んでいきたがっていること、しかしそれは「普通の自分」とか「良い子の自分」ではない「皆と違う自分」になってしまうことへの恐れにつながっていました。
そんな子どもの自分の心をまなざしのなかに見つけてもらえたことは、私が子ども時代にちゃんと誰かのまなざしに抱えてもらえた記憶を呼び覚ましました。
私が見ようとしていなかった私の心が他者の目にどんなふうに映っているのかを言葉にして伝えてもらうことで、私が私について考えていくことになり、自分が救われた気がしました。
自分で自分の心を自由に生きてもいいんだと。
私は他者のまなざしのなかに抱えられる体験をし、この感覚がまさに自分が自分を見つけていくための支えとなることを実感しました。
この経験は、私がなぜ自分が子どもの心の専門家になろうと思ったのかを確固としたものとして自分のなかに根付くものであると確信させてくれました。そして、私が心理療法で出会う子どもがその子らしく自分を見つけ育てていけることが私にとって最も大切にしたいことだと心の底から思わせるものとなりました。
子どもの心へのまなざしを持つ心理療法家であるということが私の信念となっています。
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私たちの「小笠原こどもとかぞくのカウンセリングルーム」は、「子どもと家族の心をつむぎ、心を育むためにー子どもの生きた心へのまなざしをー」という理念と、「ひとりひとりの子どもがその子らしいユニークな心を生き生きと育んでいくこと」を大切にする子育てができる世の中になってほしいという願いのもと、子どもと家族のための心理・発達についての相談の場、子どもの心を育むためのまなざしをもった心理支援を実践する専門家のための学びの場、そして、子どもの心を大切に育てたいと願う家族・親のための学びの場を提供することを目的とし、開設致しました。
小笠原こどもとかぞくのカウンセリングルーム代表
小笠原貴史(臨床心理士・公認心理師)
※もともとはホームページに掲載していた文章ですが、ホームページのリニューアルに伴い、ブログページの方に移動させました。
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