前回の探検家が語る子育てに引き続き、
今回も、「こうすべき、ああすべき」式ではないタイプの、ユニークな子育て本を紹介したいと思います。
嶋﨑研一さんの『おもしろおかしいカイちゃん』(竹林館)、『孫という名の宝物』(朝日新聞出版)という本です。
前回ご紹介した角幡唯介さんの本は、パパによる子育てのまなざしという感じでしたので、今回は嶋﨑研一さんによるジイジのまなざしによる子ども(孫たち)の観察です。
『おもしろおかしいカイちゃん』では、カイちゃんの誕生から3歳半までを中心にお兄ちゃんのアッ君やママやパパ、ジイジ、バアバとの関わりの記録が、
次の『孫という名の宝物』は、その後、成長したカイちゃんとアッ君、新たに生まれた妹ひーちゃんも登場し、さらに賑やかな個性豊かな子どもたちの様子が生き生きと綴られています。
嶋﨑さんは、子ども(孫たち)のことをよく見ています。よく聞いています。
そして、見たものや聞いたものを不思議に感じながら、優しく包み込むように子どもの個性を想像しながら関わっています。
「ジイジは、パパやママと違って、孫を四六時中、面倒を見なくて済むので、余裕をもって面倒をみ、孫と戯れ、孫を観察できる」
「私は、三人の孫たちと触れ合いながら、三人が三様、強い個性をもっているのを知った。子どもは生まれながらにして強い個性をもっているのに目を見張った」
ジイジというポジションだからこそ、
とも言えるでしょうが、決してそれだけではなく、
この本のなかには、子どもの個性を大切にしたいという嶋﨑さんの想いがあふれています。
3人の孫たちがそれぞれ非常にユニークな個性を持った存在として認められていることがわかります。
また、嶋﨑さんはこの本の冒頭に「かつて赤ちゃんだった人々に贈る」と書いています。
親もかつては子どもであったということです。
これは、子育てをしていく上で、大切な気づきのように私は思います。
自分が大事に育ててもらえたこと、我慢させられたこと、叱られたこと、理解してもらえたことやもらえなかったこと等など。
親自身のなかの子ども部分が、実際の自分の子どもと時に重なったり、時に反発したり、色んな気持ちがかき立てられることって皆さんにもないですか?
子育てをしていると、自分のなかにあるそういった子ども部分あるいは育てられ体験が刺激されます。
子どもの自分は親にどうしてほしかったのかな、親の自分は子どもにどうしてあげたいのかな。
子育ては親にとって、子どもと向き合いながら、やはり自分自身と向き合うことになるのだと思います。
それはジイジになったって同じです。
嶋﨑さんも、孫たちの姿を見ながら、幼い頃の嶋﨑さん自身のさまざまな想いを重ねていたようです。
「生まれながらにして、強烈な個性を持っているのを目の当たりにして、これに親しみ、これを、決して歪ませてはならないと思っている」
この本に綴られた嶋﨑さんの想いと言葉からも「子育てに唯一の正解はない」ということを大いに実感させてもらえます。
自分は自分らしいユニークな存在でいいんだと、
自分がユニークでいられることこそ、自分の値打ちだと、
そんなふうに子どもが自分のユニークさを肯定的捉えられるように、
子どもの心を大切に育てていきたい。
そんなふうに想います。
そのためには親自身も自分がユニークな存在であること、そこに自分の値打ちを感じられるといいなと思います。
嶋﨑さんの本を読みながら、ユニークな子育てをしていくことは、そのユニークさを許容してくれるユニークな人たちとの出会いやつながりによって支えられるということなのかもしれないなと感じました。
そんな出会いやつながりを大切にできたら、それはとても素敵なことだなと思います。
(嶋﨑研一『おもしろおかしいカイちゃん―赤ちゃんは天からの贈りもの』竹林館,2007、『孫という名の宝物―三人三様の三つ子の魂』朝日新聞出版,2013より)
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